『ブラック・クランズマン』と『國民の創生』

分析・解説

 2020年5月25日。アメリカのミネアポリスで偽札使用の疑いをかけられたアフリカ系アメリカ人男性が白人警察官の不当な扱いによって命を落とした事件がありました。これを契機として、アメリカ各地で抗議運動や暴動が起こったことは記憶に新しいと思います。(☜ブラック・ライヴズ・マター)

 現在のアメリカでは、再び人種問題が顕在化してきたと言えるでしょう。そこで、アメリカでマイノリティとして生きることを追及しているスパイク・リー監督作品を観ることは、アメリカを知る上で重要なことかもしれません。

 今日はそんなスパイク・リー監督作品の『ブラック・クランズマン』を特にKKKに注目して分析・解説したいと思います! ⚠ネタバレを含みます。

 

白人至上主義の秘密結社「KKK」

 まず、映画をより深く理解するために白人至上主義の秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)の歴史を簡単にまとめてみたいと思います。

 KKKの結成は南北戦争後まで遡ります。KKKのその当時の目的は、アフリカ系アメリカ人に選挙権を渡さないで、白人に有利な状況を維持することにありました。

 南北戦争後の1870年、議会はアフリカ系アメリカ人の成人男性に参政権を与える法を成立させたため、しばらくの間南部は共産党(アフリカ系アメリカ人が支持していた党)が各州の政権を握っていました。元奴隷主である白人たちはこれを納得するわけがありません。

 そこでKKKと名乗る白人至上主義者たちが覆面をかぶり、選挙のたびに暴力や選挙不正を行ってきました。この当時55万人ほどの加盟者がいたといわれています!

 しかしながらKKKは政府によって活動が非合法化されてしまいます。それでもなお選挙権を渡したくない白人たちは、憲法の解釈により参政権の剥奪を試みました。その方法は、投票する前に読み書きテストや投票税の支払い義務というものを行い、アフリカ系アメリカ人にだけ合格させないようにしました。憲法では保障されているものの、投票ができない独自のルールを作り上げたのです。

 これによって裁判官や保安官が白人が独占するようになり、人種隔離が横行するようになっていきました。白人に有利な社会基盤が出来上がったことと、KKKの活動目的がなくなったことにより、KKKは消滅しました

 

KKKを復活させた映画『國民の創生』

 『ブラック・クランズマン』では物語後半、KKKの入会式のシーンのとき『國民の創生』(1915)という映画をKKKの会員証を持つメンバーで観て盛り上がっていたシーンがあったと思います。なぜ映画の中で映画を引用するのでしょうか? 必ず意味があります!

 それは『國民の創生』という映画が、アメリカのさまざまな歴史において非常に重大なものであったからです。セリフでこのように言っていたのを覚えていますか? 

 事件が起きたのは1つの映画だ。

『ブラック・クランズマン』(2018) のセリフを引用

 D・W・グリフィスが監督を務めたこの『國民の創生』はKKKを正義として描き、消滅していたKKKを復活させてしまったのです。そして映画も大ヒットを記録しました。

 この当時の映画は、今のような芸術形態のものではありませんでした。ただ動くものをスクリーンに映し出すだけのものです。カメラを遠くにおいて、ただ動物を映したり建物を映し出す。もちろん映画に音声(セリフ)もありません。それどころか映画は、英語すら話すことのできない移民たちが見るものとして見下されていたものでした。

 そのような今までの映画概念を変え、芸術形態のものとして確立させた映画が『國民の創生』でもあります。今までにないド迫力の映像。人の感情を表現するかのようなカメラの動かし方。どれくらいの衝撃だったかも想像できません。

 映画に足を運ぶことのなかった社会的にも影響力のある中産階級以上のアメリカ人がこの映画を観ることで、様々な人が映画を芸術と認識し、様々な人が映画を観ました。

 映画評論家の町山智浩さんはこのタイトルについてこう述べています。

 この映画は、南北の白人同士が黒人を排除するために力を合わせたときを「國民の創生」としている。

最も危険なアメリカ映画(町山智浩, 集英社インターナショナル, 2016)

 映画後半のあのシーンでは、儀式のように『國民の創生』を会員メンバーで観ることでKKKが正義であることを確認し、白人同士で力を合わせて本当のアメリカ国民を創生しようとしている組織(KKK)を描いています。

 映画の歴史にも、アメリカの人種問題にも油を注いだこの映画は、とても重要なものであるのです。

 ちなみにこの『國民の創生』はYoutubeで視聴可能です。

 

miniまとめ

 最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。この記事を読んで、少しでも人種問題に関心を持っていただけたら幸いです。

 スパイク・リー監督は、今なお残る問題を見つめ、少数派(マイノリティ)として生きることを一貫して探っている監督だと思います。関心がありましたら、ほかにもとても面白い作品がたくさんありますので、是非観てみてください!

 

【参考文献】

アメリカ黒人の歴史 (上杉忍, 中公新書2209, 2013)

最も危険なアメリカ映画 (町山智浩, 集英社インターナショナル, 2016)

【参照】

画像:フリー素材

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