2008年に公開され、興行も評価も高い数字をたたき出した『グラン・トリノ』。アカデミー作品賞受賞作「ミリオンダラー・ベイビー」以来、4年ぶりとなるクリント・イーストウッドの監督×主演作ということもあって注目を集めた作品です。
今回はそんな『グラン・トリノ』のあらすじから、隠された意味まで解説したいと思います!!
⚠以下ネタバレを含みます。まだ観ていない人は観てから記事を読んでいただけると嬉しいです。
あらすじ
妻に先立たれ、デトロイトの高級な住宅街で一人暮らしをする頑固で人種差別主義を貫く老人コアルスキー(イーストウッド)。ある日彼の隣に、東南アジアからの政治難民である”モン族”が越してきた。彼はアジア人が越してきたことに腹を立てるが、ある事件を境に心を開き始める。自身の偏見の葛藤を描いた息をのむ感動作です!!
クリント・イーストウッド監督
ジャーニーズ事務所に所属している嵐の二宮和也さんが『硫黄島からの手紙』でハリウッドデビューしたことで話題になりましたが、その作品の監督が今作品で主演・監督を務めているクリント・イーストウッドです!
イーストウッドは、アカデミー賞の中で最も名誉の高いとされるアカデミー作品賞とアカデミー監督賞を二度も受賞するなど、ハリウッドで長年活躍し続けている名監督であります。
重要になってくるコアルスキーの人柄

この映画を紐解くキーポイントとなってくるのがイーストウッド演じるコアルスキーの人物像です。
彼は、朝鮮戦争退役後50年間フォードという大手自動車会社の組立工として働いていたポーランド系米国人です。この映画では頑固な古臭い老人として描かれていましたが、これは言わば当時の「アメリカっぽさ」を象徴した人物ではないでしょうか?
いつまでもアメリカ産の自動車にこだわり、アジア人や黒人関係なく差別し続ける昔のアメリカ人。これは、彼の愛車”グラントリノ”を見れば一目瞭然。そこにはアメリカ魂と彼の魂が詰まっているのです。
彼自身の心の変化も見どころですが、その彼の分身でもある愛車”グラントリノ”をどうするのかがこの映画の見どころになっています。
アメリカ車と日本車
アメリカの20世紀=デトロイト
20世紀のアメリカの主要産業が自動車産業だったのは聞いたことがあるのではないでしょうか? その中でも、デトロイトは自動車産業の中心地でした。1903年には、ヘンリー・フォードが量産型の自動車工場を設置し、デトロイトは全米一の自動車都市まで昇りつめたのです。
しかし、1970年代~80年代にかけて安くて質のいい日本の自動車の登場によって、その地位は低下する一方となり、デトロイトで働く人たちの解雇や企業の倒産が相次いで起こりました。
当時、日本車をぶっ壊したり、アメリカ車のみを買う騒動が起こったりする事件などが多発して問題になっていたそうです。
映画の中の車の役割

映画はそんな騒動が終わり、デトロイトの衰退とともに人の流れが激しくなったちょっと昔のデトロイトが舞台となっています! 移民が移り込んできて、白人はコアルスキーしかいないような状況…
それを象徴するのが車です!
☑1972年型のグラントリノ
フォード車種フォード・トリノのうち、1972~76年に生産されたものをグラン・トリノと呼びます。当時のでかくて強いアメリカのシンボルのような存在です! 日本車を嫌い、グラン・トリノを愛用していることからも、コアルスキーの性格がここに詰まっていることがわかります!
☑日本車
コアルスキーの息子の愛車は”トヨタのランドクルーザー”です。息子はトヨタのセールスマンをしていました。コアルスキーは息子を批判していました。元フォードの組立工ということもありますが、当時の関係が書かれていたと思います。
隠されたメッセージとは?
コアルスキーの心の変化もとても魅力的ですが、愛車グラン・トリノに注目してみてください!
最後のラストシーン、愛車のグラントリノをモン族の少年タオに手渡しています。あんなにも憎んでいたアジア人に、アメリカの象徴でもあるグラントリノを受け継いでもらっています!
はじめは憎んでいましたが、生の出会いを通して心が変わり、象徴を譲っています。言い換えれば、『アメリカ魂の継承』です。
恨みや憎しみ、偏見。移民や人種の問題。様々さ問題を抱えるアメリカですが、人種に関係なく、アメリカの思いを白人だけで団結するのではなく、アジアだろうが黒人だろうが関係なくイーストウッドは継承していくんだ! という思いが伝わってきませんか?
これを見たアメリカ人は、変わるべき時だと自覚し、大絶賛の嵐だったそうです。この映画はアメリカ人のためだけでなく、私たちみんなに通じるテーマだと思います!!
インタビューで学ぼう!
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イーストウッド監督は出会いと偏見についてこの特典映像で語ってました。もしよければ、こちらも見てみてください!!
最後まで、読んでいただきありがとうございました!!
【出典】
画像:フリー素材
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