『レディ・バード』の主人公を考察する!! 学園内のグループ「ゴス」とはいったい何なのか。

分析・解説

 グレタ・ガーウィグ監督のデビュー作となった本作品『レディ・バード』(2017)は、2002年頃のサクラメントを舞台として、アメリカ東部に憧れる思春期の高校生を描いた作品です。

 また本作品は、映画の評価を確認する一つの指針となる映画批評集積サイトRotten Tomatoesで、批評家から99%という高い支持を集めた作品でもあります。ちなみにこの数字は2019年に世界中で大ヒットした『パラサイト 半地下の家族』と同じ数字です!

 今回はそんな、『レディ・バード』の主人公に注目して、作品のテーマについて幅広く考察・分析していきたいと思います。

 ⚠ネタバレありです

 

アメリカで「ゴス」と呼ばれる人たち

 この映画の主人公レディ・バード(クリスティン)は、アメリカの学園生活(特に映画)の中で「ゴス」と呼ばれるグループに分類できる女の子です。この「ゴス」とは、アメリカの学園生活の価値観において敗北者としてみなされている場合が多いです。

 この価値観は、イギリスからの影響を強く受けています。歴史をみていくと、産業革命のときにイギリスは急激に近代化の道を進み始めました。機械化により産業が発展していったのです。

 科学の力で便利になった一方、人間らしさが失われていると感じる人も多かったと思われます。そのため、絵画や文学、音楽などの芸術活動が盛んになっていきました。その流れで登場した一つが「ゴシック・ロマンス」とよばれる小説です。そこで描かれるのは、近代化した社会から疎外された人々の想いや、イギリスの階級社会への抵抗です。

 この流れが、アメリカ社会にも伝わっていきます。そして、アメリカ社会で疎外され、弱い立場にいるティーンたちはこの音楽や小説に救いを感じます。

 そして現在、アメリカ学園生活の価値観に抵抗しているのが「ゴス」と呼ばれるような人たちです。

 金髪ではなく、黒髪。アメリカの精神的支柱プロテスタントを否定するなど、抵抗の仕方はさまざまです。抵抗しているため、周りからは外れている人と思われることが多いです。

 

「ゴス」としての生きづらさ

 いくら周りから外れていると思われようが、勉強さえできていれば高校卒業後は有名大学へ進学し、一流企業に就職することも夢ではありません。いい企業に入ることができれば、高校時代のいじめっ子たちを見返すことが可能です。

 しかし、「ゴス」の家庭環境はあまりいいといえることが少なく、その家庭環境に影響し、勉強もあまりできないため成績もよくないのが「ゴス」の人たちです。いい会社に就職して、高校時代のピラミッドを逆転させることが難しいとされています。

 だから、この理不尽さなどをみて、アメリカ社会の価値観に抵抗しているとも考えられます。そう考えれば、思春期のレディ・バードが、自分を大きく見せて、サクラメント(田舎)や母親さえも嫌っているのもわかってくるのではないでしょうか。

 

レディ・バードとクリスティン

 そのような抵抗からか、クリスティンは自分を強く見せるためか自分の名前を ”レディ・バード” と呼び、レディ・バードを演じていきます

 実際この映画ではそのことを表現するために、様々な枠(フレーム)が登場します。この枠(フレーム)は、世界を区切る役割を持ちます。フレームの中は役者が演じる場です。まさに演劇のステージと同じような意味を持っています。

 レディ・バードとして生きるクリスティンは、特別で反抗している自分を演じます。大学進学のためにサクラメントを出るまで、自分が自分を演じていたことに気づきません。

 

注意を払う=愛情 という1つのテーマ

 アメリカ東部にある大学の進学が決定した後、レディ・バードは自分の部屋を塗り替えます。これは、人生が塗り直されるかのように見えます。その後、レディ・バードがクリスティンとして自分自身を見つめなおしていきます。

 そしてこの映画は、ambivalence(愛憎相半ばする感情)を巧みに表現しています。この感情は地方に生まれて都会を憧れる人には強いものかもしれません。

 クリスティン自身も好きだけど好きと言えない気持ちを強く持っています。映画終盤に、ニューヨークの教会へ行くのは、サクラメントにもあるものを感じて落ち着きたかったからだと推測できます。

 このようにこの映画では何度も、サクラメントのあたたかさ(後になって気が付くあたたかさ)が照明などの技術で表現されています。

 

2002年の物語(miniまとめ)

 この物語の舞台は、レディ・バードの高校生活最後の年です。この年は、ニュースやお正月のシーンから9.11直後の2002年だということがわかります。この年は、前後で社会が大きく変わる年でもあります。

 その後はスマホの登場と現代化が大きく進みます。それだけでなくアメリカの社会情勢も不安定な時期を迎えます。この映画はそんな時期に生きたクリスティン(レディ・バード)の物語です。

 その後どうなったかはどうでもいいのです。その年にレディ・バードは何を見てどう変わっていったのかが、大事な部分だからです。

 ☝DVDやBlu-rayには、監督による音声解説という特典がついています!

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

【参考文献】

『High School U.S.A.』, 長谷川町蔵 山崎まどか著, P100-101, 2006

『英米文学者と読む約束のネバーランド』, 戸田慧, 集英社新書, 2020

 

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