Netflixオリジナル作品『好きだった君へのラブレター』からみるティーンムービーの多様化

分析・解説

 韓国系アメリカ人作家の小説三部作を原作としたNetflixオリジナル映画『好きだった君へのラブレター』。マイノリティであるアジア系の女の子が主人公の物語です。

 Netflixによるオリジナル作品の登場によって、映画の受容の仕方が変容していきました。今日はそんな21世紀の新しいティーンムービーがどのように変容(時代の変化)して、どのように多様化(ジャンルの幅広さ)したのかを考察・分析していきましょう!

⚠ネタバレを含むため、映画鑑賞後に記事を読んでいただけると嬉しいです。また、少し難しめで、長い記事になっています。

 

『すてきな片想い』の引用とオマージュ

 ティーンムービーの魅力は学校内の人間関係とそのドラマにあります! 大人にとっては代わり映えのないどれも同じような時間だけれども、学生たちと学校という舞台では毎日が異なった意味を持ちうる大切な時間であるのです。

 そんなティーン・ムービーを作り上げたといえるジョン・ヒューズの作品『すてきな片想い』(1984年)を映画の中で映画という媒体を引用していることは、オマージュを捧げているといえるのではないでしょうか⁉ しかも、引用している作品はジョン・ヒューズの初監督作品です(←まだ観てない人は観てみてください! Netflixで視聴可能です)。

 引用されているシーンは中国人留学生がプロムと親のいない間こっそり行うパーティーで暴走しているシーンです。『好きだった君へのラブレター』でこの映画を観た主人公ララ・ジーンは「差別的だと言っていました。確かに現代において、アジア系の留学生をおかしな奴と表現するのは確かに問題かもしれません。

 ここからもわかる通り価値観と映画の表現は時代とともに多様化していくものです。ジョン・ヒューズがつくりあげた部分がどのように継承され、どのように変化しているのかを分析することは、学園映画の文化史の理解において極めて重要なことであると私は感じています! そこでティーンムービーの多様化を特に人種の観点から見ていきましょう!!

 

アメリカの人種観

 最近のティーンムービーでは、現代アメリカにおける人種的格差つまり、マイノリティの生きにくさを表現していることが多く見られます。なぜならアメリカはさまざまな背景文化を持つ移民で構成された国であるからです。

 アメリカが植民地となっていた時代はヨーロッパ系、特にイギリス系の人たちがアメリカに多く足を踏み入れていました。そのためアメリカの基盤になっているのはイギリスの制度やヨーロッパの文化です。ティーンムービーでよくみかけるプロムというパーティがアメリカ文化にとって重要な役割を果たしているのは、基盤にヨーロッパの上流階級の伝統が継承されているからなのです! アメリカはこれらのイギリス系(ヨーロッパ系)の人々に支配されてきました。この支配層がWASPと呼ばれるもので、長い間アメリカの支配層に位置付けられていました。

 20世紀ごろまで移民を自由に受け入れていたアメリカにはさまざまな移民がいました。移民してきた人達は、アメリカ人になるために支配層であるWASPへの同化を試みました。各々持った文化の伝統を消してまでもWASPへの同化を目指したのです! しかしながら1960年ごろから、自分たちの文化に誇りを持ち、自分たちの独自の文化をアメリカ精神に融合させようとする動きがでてきました。文化に優劣はなしとし、自分たちの文化も大切にする文化多元主義が見られるようになったのです!

 

ティーンムービーの伝統の継承と変容

 アメリカは常にマイノリティの問題を抱えています! また、マイノリティは「私はアメリカ人なのか」とアイデンティティの問題を抱えながら、同時にマジョリティの輪に馴染まなければならないという生きづらさがあります。それは特に学校というティーンの独自のルールの中ではもっと深刻なことだと思われます。ジョン・ヒューズが映画の中に持ち込んだ学校の階層のように、アメリカの学校には目に見える階層が存在しています。ジョン・ヒューズの映画では、階級の異なったグループの人たちがその階層という壁をどう乗り越えて仲良くなるかということがテーマになることが多くありました。

 しかし現代は、アメリカ社会の多様化に伴い映画も多様化されています。ジョン・ヒューズが作り上げた文法の中で、人種の壁というものが新しく要素に加わったのです。『すてきな片想い』の中で外国人留学生は変な奴だとしてユーモアの一部になっていました。

 しかし、『好きだった君へのラブレター』では主人公がアジア系アメリカ人と焦点をあてられています! マジョリティに混じることができずに、妄想の中で恋をする主人公。プロムに参加したことのない主人公。アイデンティティを隠している主人公。アジア系アメリカ人を主人公にすることで、人種という壁をどう乗り越えているのかが映画では大事な要素の一つになっています! これは決してジョン・ヒューズの作品を否定しているのではありません。常に時代とともに新しい価値観を踏まえ、新しいことが生まれていく。ジョン・ヒューズが作り上げたティーンムービーの型を踏まえ、その時代の問題を加え新しいものになっていく。そこにジョン・ヒューズへの愛がオマージュとして詰まっているのではないでしょうか!?

 

miniまとめ

 ジョン・ヒューズが作り上げたティーンムービーの形を変えつつ現代まで継承されています。『好きだった君へのラブレター』はそのことがよりわかる映画だったと思います。それだけでなくジョン・ヒューズは実際のティーン文化を作り上げたと私は思っています。この映画を観てジョン・ヒューズが作り上げたのは文法だけでなく、実際の学生生活まで影響を与えていると確信しました! 恋愛をしたことのない主人公はジョン・ヒューズの作品を観て恋愛を学び、学校生活を学ぶ。Gleeをはじめ数多くのアメリカドラマはジョン・ヒューズの作品をモチーフに作品をつくっています。そのドラマや映画の影響力はティーンにとってとても大きいことは間違いないと思います!

 もし、私の記事を読んでジョン・ヒューズの作品に興味がでてきましたら、是非観てみてください! 誰よりもティーンの視点で物語っています! ちなみに日本で大人気の映画『ホーム・アローン』の脚本を書いたのもジョン・ヒューズです!

 

【参考文献】

アメリカ文化を学ぶ人のために, 川上忠雄, 世界思想社, 1999

High School U.S.A. , 長谷川町蔵, 山崎まどか, 国書刊行会, 2006

【参照】

画像:フリー素材

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